ヒートパイプ ①ヒートパイプの原理

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ヒートパイプの役割

ヒートパイプは作動液の蒸発・凝縮と毛細管現象を利用して、一方の端部に加えられた熱を、もう一方の端部に高速で移動させる伝熱装置です。

ヒートパイプの作用はあくまで熱の移動であり、冷却能力はありません。 そのためヒートシンクや放熱フィン等の冷却部品と組合わせることにより、熱源から熱を移動させ冷却を行います。

 

ヒートパイプの基本構造

■ヒートパイプの材料と特性

ヒートパイプは熱伝導性の良い銅やアルミニウムの中空形状の本体と、パイプ中に封入された揮発性の 高い液体(作動液)と、凝縮した作動液を毛細管現象を利用して移動させるウイックで構成されています。

ヒートパイプは熱伝導率と熱輸送効率が高く、材料に使われている銅やアルミニウムと比較しても非常に小さな温度差で熱を伝えることが可能です。

 

ヒートパイプの基本動作

■ヒートパイプの動作メカニズム(移動)

ヒートパイプの断面構造 右図はヒートパイプの断面構造です。
図の左側が高温部、右側が低温部(冷却部)となります。

①高温部内壁で作動液が熱を吸収して蒸発する。
②作動液蒸気が空洞を通って低温部に移動する。
③低温部で冷却された作動液蒸気が凝縮して液体に戻り、内壁のウイック(毛細管構造の芯)に吸収される。
④作動液が毛細管現象により、内部ウイックを伝わって高温部に戻る。

このように両端に温度差を与えることにより、上記①~④の過程が生じ、 ヒートパイプ内で作動液が循環し、高温部から低温部へ熱移動が起こります。

 

■ヒートパイプの動作姿勢

ヒートパイプは、高温部分の位置 (高さ方向のレベル) によって、概ね以下3つの動作姿勢に分類されます。

・ボトムヒート: 高温部が下方 (高温部の位置が低い)
・水平ヒート: 高温部と低温部が同位置
・トップヒート: 高温部が上方 (高温部の位置が高い)

これら3つの動作姿勢による熱輸送量の大きさを比較すると、下記のようになります。
トップヒート < 水平ヒート < ボトムヒート

 

ヒートパイプのバリエーション

ヒートパイプは、細長い円筒 (パイプ) 形状ですが、近年では電子機器の小型化、薄型化、軽量化に伴い、小径で扁平型 (パイプをつぶしたような薄型) のものが増えています。

一般的に、パイプの直径が大きく、扁平にしたものより丸いもの、曲げたものよりも曲がっていないものほうが、熱を運ぶ能力は高くなります。

熱源の発熱量や用途などの条件を考慮して、最適な仕様を選定することが重要です。

 

■作動液の種類

ヒートパイプに使用される作動液には、以下の性質が必要です。

・蒸発潜熱が大きく単位流量あたりの熱輸送量が大きい
・粘性が小さく流動抵抗を小さくできる
・毛細管現象を強くするために表面張力が大きい

実際に使用されているヒートパイプの作動液は以下です。

(1) 水 (純水)
作動液に水を使用したヒートパイプは、一般的な環境でよく使用される作動液で、電子部品の冷却などに使用されています。ただし、使用可能な温度範囲が、0℃以上〜約200℃であり、0℃以下の環境では使用できません。

(2) エタノール
エタノールは、水では凍結するような低温の温度域で使用する作動液で、使用可能な温度範囲は、約-10℃〜約100℃強です。 

(3) ナフタリン
ナフタリンは、水が使えない高温の温度域で使用する作動液で、使用可能な温度範囲は、約200℃〜約400℃です。

 

■パイプ材料の選択

ヒートパイプのコンテナ部に使用される代表的なパイプの材料は、下記のとおりです。

(1) 銅パイプ
銅パイプは、曲げ加工や偏平加工が容易であり、さまざまなサイズ・形状の製品を入手することが可能です。

(2) アルミニウムパイプ
アルミニウムパイプは、銅管よりも軽量でさらに加工性に優れているため、使用されることの多い材料です。

(3) ステンレスパイプ
ステンレスパイプは、銅管やアルミニウム管よりも重量があり加工性もやや劣りますが、ナフタリンを作動液として使用できる材料です。

 

ヒートパイプの特長と利点

(1) 優れた熱伝導性
ヒートパイプのコンテナは、銅やアルミのような熱伝導率の高い材料で作られているため、少ない温度差で熱を非常に効率的に伝えることが可能です。また熱を均等に全体へ分散させることができるため、熱の部分的な集中を防ぐことができます。
蒸発した作動液は、高速で移動し熱を運び、再び凝縮して液体になります。瞬間的にこのサイクルを繰り返すため、熱の応答性が非常に高いことがヒートパイプの特長・利点として挙げられます。

(2) 静音で振動の少ない動作
ヒートパイプは、動力を伴う機械部品がなく作動液の循環だけで動作するため、静音で振動が少ないため、安定した動作を行うことが可能です。

(3) デザイン・設置場所の自由度
ヒートパイプは、外形寸法や長さ、曲げ加工や扁平加工など、さまざまな形状に加工することが可能なため、高いデザインの自由度をもちます。
また設置スペースが限られた条件下での熱管理においても、扁平加工等を施したヒートパイプが使用されます。

(4) 信頼性と長寿命
ヒートパイプは、部品の摩耗が少なく、機械的な故障のリスクがほとんどないため、信頼性が高く長寿命なため、メンテナンスにかかる時間やコストが削減できます。

 

■ヒートパイプの応用例

ヒートパイプは、身近なものから工業・産業分野など多くの場面で応用されています。日常的に目にする機会は少ないかも知れませんが、環境にやさしく小型で寿命が長いため、非常に重要な製品として利用されています。以下に応用例の一部をご紹介します。

・電子機器の冷却
ヒートパイプは、コンピュータやスマートフォンなどの電子機器に内蔵され、効率的に排熱するために使用されます。コンピュータでは、CPUやグラフィックスボードが発生する熱を吸収し、それをヒートシンクに伝えて冷却します。
その他、液晶テレビ・デジタルカメラやコピー機など、発熱する機器が内蔵されている多くの電化製品でヒートパイプが使用されています。

・LEDライト
スタジアム・体育館・工場・道路や空港の照明に使用されているLEDライトは、多くの熱を発生し、その熱で製品寿命が短くなります。ヒートパイプを設置することでLEDライトの長寿命化を実現しています。

 

ヒートパイプの最適な使用条件

ヒートパイプは、極端な環境(極めて高い湿度や塩分濃度等)でない限り、一般的な環境下においては、半永久的に使用可能ですが、使用環境に応じたヒートパイプを選択することで高い効果を得られます。

・使用温度範囲
ヒートパイプはその種類によって使用可能な温度範囲が異なります。ヒートパイプの材料や形状・作動液の種類などの仕様が、使用環境の温度範囲に適合しているかを確認して、選定することが重要です。

・動作姿勢
ヒートパイプの作動液は、重力の影響を受けるため、ボトムヒートまたは水平ヒートの配置が推奨されます。ボトムヒートの場合、ヒートパイプ内の作動液が重力に逆らわずに下方に移動するため、効率的な熱伝導が可能になります。

 

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