熱移動の3原則(熱伝導・対流・熱放射)についてメカニズムを解説

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熱移動の3原則(熱伝導・対流・熱放射)

■熱移動とは

熱移動とは、熱が温度の高い物体から低い物体へ熱エネルギーが移動する現象です。
熱移動は、大きく分けて熱伝導・対流・熱放射の3つの現象があります。この3原則の大きな違いは、熱が何によって運ばれるかです。

 

熱伝導

熱伝導は、物体内において熱が高温の部分から低温の部分へ移動する現象です。物質を構成する原子や分子の熱運動による振動や衝突などによっておこる現象です。

対流(対流熱伝達)

対流は、温度差によって気体や液体の流体が移動し循環することで、熱が移動する現象です。熱を持った分子が自由に移動できる性質があります。

熱放射(熱輻射)

熱放射は、物体から放射される電磁波 (放射線、赤外線) により、空間を移動し離れた物体間で熱が移動する現象です。熱放射は、熱輻射とも 呼ばれています。

 

 

熱伝導について

■熱伝導とは?メカニズムについて

物体を加熱すると、その熱エネルギーによって物体の分子や原子の運動が活発になり温度が上昇します。その逆に、物体を冷却すると物体の分子や原子の運動が緩慢になり温度が低下します。この現象は特に固体の場合の現象です。

高温の物体と低温の物体が相互に接触している場合、熱エネルギーは高温の物体から低温の物体へ移動します。高温の物体側の原子や分子の運動は徐々に鈍くなり、低温の物体側の原子や分子の動きは逆に活発になります。最終的には、相互の物体の温度は同じになり、熱の移動が止まります。この状態を、熱平衡の状態といいます。

 

■熱伝導の事例

日常生活においては、料理の場面で熱伝導が利用されていることをご存じでしょうか。鍋やフライパン等の調理器具に食材を入れ火にかけると、器具の温度が上昇し、その熱が食材を温めます。この過程も熱伝導です。

このような調理器具は熱伝導率の高い、アルミニウムや銅などの金属を主な素材にします。取っ手の部分は逆に熱伝導率の低いプラスチック等が使用されます。

その他にも、熱伝導しにくいように作られる物の事例として、住居等の壁があげられます。住居の壁内にグラスウール等の繊維系素材や発泡プラスチック等、熱伝導率の低い素材を使用することで夏の暑さや冬の寒さを感じる外気温度の影響を受けにくくし、室内空間を快適な温度に保ちます。

なお、ここでは熱伝導に関する概要を説明しましたが、詳細につきましては、熱応用技術の基礎 ➂ 熱伝導」で説明していますので、ご参照ください。

 

対流について

■対流とは?メカニズムについて

流体 (液体や気体) は、温度が上昇すると体積が増加し密度が小さくなり、温度が下降すると体積が減少し密度が大きくなります。密度が小さくなり軽くなると流体は上昇し、密度が大きくなり重くなると下降します。

この温度変化に伴い流体の密度が変化し、上昇したり下降したりと流動する現象が対流です。

 

■対流の事例

対流には、自然対流と強制対流の2つがあります。

・自然対流
自然対流とは、流体内部の温度差によって発生。温められて密度が小さくなった気体(または液体)が上に流れる現象です。強制対流に対し、ファン等の外的な力を用いない対流を自然対流と言います。

・強制対流
強制対流とは、外的な力によって流体を動かすことによって発生します。例えば、エアコン (エアコンディショナー) や扇風機は、ファンや羽根によって空気の流れを発生させ、強制的に物体の熱を移動させます。

 

 

熱放射について

■熱放射とは?メカニズムについて

物質内の分子や原子は、その物質の温度で熱運動が起こり、熱運動により電磁波 (放射線、赤外線) が放出されます。この現象が熱放射です。

この電磁波を他の物体が吸収すると、物質内の分子が振動して物質の温度が上昇します。

熱放射の特徴は、熱伝導・対流と異なり、中継する物体を必要としないため、空間や真空中においても熱が移動することです。

 

■熱放射の事例

熱放射もまた、身近なものに多く利用されています。例えば、電子レンジは、放出した電磁波が食品内の水の分子を振動させることで食品を加熱します。

その他、こたつやストーブ等の暖房器具にも、放射熱を利用したものが多くあります。こたつは、発熱体から放出される赤外線などの電磁波によりこたつ内の空気を暖めます。ストーブも、電気や火で内部を熱して熱放射により周辺を暖めます。だんだん部屋全体が暖まってきますが、それは対流によるものです。

晴れた日に日向にいると温かいことも熱放射によるものです。夏の暑い日に日傘をさしたり、地面に水を撒く「打ち水」等は、熱放射による温度上昇を防ぐ役割を果たしています。

 

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