ネオジム磁石とは?強力な磁力の秘密とは
■ネオジム磁石とは?
ネオジム磁石は、強力な磁力を持つ人工磁石の一種で1980年代に日本で開発され、フェライト磁石の約10倍近い強さを持ちます。その主原料は、レアアースの一種であるネオジム、鉄、ホウ素で構成されています。
小型で軽量なため、様々な用途に使用され、例えば、ハードディスクドライブ、スピーカー、自動車部品、MRIなどに使われています。
ネオジム磁石は、熱を加えると熱減磁が生じやすく、また錆びやすいという欠点があります。一般的に磁石は熱を加えると磁力が低下しますが、その温度は、他の磁石(サマリウム・コバルト磁石など)と比較した場合、1/2程度です。このため、熱に弱い磁石の分類に入ります。また、錆びると磁力が低下するため、塗装やめっきで表面処理をする必要があります。
※熱減磁に関する記事はこちら
■ネオジム磁石が強力な理由
磁石の強さは、「磁気異方性」と「飽和磁化」の強さで決まります。
磁力が強い磁石の条件は、「磁化のしやすい方向が1つの方向かつ、飽和磁化が高い」ことが条件となります。なお、「磁気異方性」と「飽和磁化」とは次のことを意味します。
・磁気異方性とは、物質の磁気的性質が方向によって異なること。この方向性が1つの方向に向いている方が強磁性体となります。
・飽和磁化とは、磁界の強さを増やしてもそれ以上磁化が増大しない状態に達したときの磁化の強さ。
ネオジム磁石は、大きい飽和磁化を持つだけではなく、磁気異方性に関しても大変優れた性質を持つ磁石であるため、非常に強力な磁力となります。
■ネオジム磁石を使用する利点
ネオジム磁石を使用する利点は以下の通りです。
1. 磁力が強力:
ネオジム磁石は、他の磁石材料に比べて非常に強力な磁力を持ちます。直径1cm~2cmほどの小さなネオジム磁石でも、吸着力が3~15kg・f 程度あり、強力な磁力を発揮することができるため、小型化・軽量化したい製品に使用されています。小型で薄いデバイスや製品にも使用されており、デザイン性や使い勝手を向上させることができます。
2. 高い機械的強度:
ネオジム磁石は、他の磁石と比べ硬く機械的強度に優れています。そのため、長期間にわたって使用することができ、摩耗や変形が起こりにくく、長寿命です。
ネオジム磁石の産業用事例の紹介
■車載モーターなどの工業用
ハイブリッド車や電気自動車などの駆動用モーターや電動パワーステアリングなどにネオジム磁石が使用されます。小型でかつ高い保磁力を持つため、モーターのサイズを小さくすることができます。
■医療機器・精密機器
医療機器では、MRI(磁気共鳴画像診断装置)や、磁気浮上軸受、磁気ポンプなどに使用されます。MRIには、強い磁力が必要であるため、ネオジム磁石が使用されます。
精密機器では、半導体製造装置、プリンター、ロボット、ステッピングモーターなどに使用されます。これらの機器では、高い精度が求められるため、ネオジム磁石を使用することで、高い制御性能を実現することができます。
■製造工程の金属異物除去
製造工場の生産ラインではどんなに注意を払っても異物混入を100%防ぐことは困難です。そのため、生産ライン上にネオジム磁石を内蔵したマグネットバーを設置することで、その強い磁力を活かし、微細な鉄粉・金属片・金属摩耗紛等の混入を防止します。
ネオジム磁石の取り扱い・使用上のご注意
■ネオジム磁石の取り扱いに注意が必要な理由
ネオジム磁石は非常に強力で、小さなサイズでも非常に強い磁力を持っています。そのため、ネオジム磁石の取り扱いには注意が必要です。
1. 怪我や誤飲の危険性がある
ネオジム磁石は非常に強力な吸引力、反発力があります。磁石と磁石、あるいは磁石と鉄片等の磁性体との間で手、指等を挟んで怪我をすることがあります。また、もし複数のネオジム磁石を誤飲した場合は、重度の傷害を引き起こす可能性がありますので、直ちに医師にご相談ください。
2. 磁気デバイスに影響を与える可能性がある
ネオジム磁石は非常に強力な磁力を持っているため、磁気デバイスに影響を与える可能性があります。例えば、パソコンやハードディスクなどの磁気媒体に近づけるとデータを消去してしまうことがあります。また、磁気カードや時計もネオジム磁石に近づけると故障の原因になるため、絶対に避けましょう。
3. 磁力が弱まることがある
ネオジム磁石は、一度磁化されると長期間磁力を維持できますが、高温や錆びることで磁力が弱まることがあります。そのため、ネオジム磁石を長期間使用する場合は、適切な温度や保管環境に注意する必要があります。
以上のような理由から、ネオジム磁石の取り扱いには十分な注意が必要です。
■ネオジム磁石の正しい保管方法
ネオジム磁石は非常に強力な磁力を持っており、保管方法に注意を払う必要があります。以下に、ネオジム磁石の正しい保管方法をいくつか紹介します。
1. 落下による衝撃等が加わると割れ欠けが生じるため、衝撃などが加わる事のないような場所に保管してください。
2. 雨水やほこり等がかかるような場所や湿度が高く結露が生じるような条件下での保管を避けることにより、錆びにくくなります。
3. 鉄などの磁性体に吸着させることにより、安定した磁気回路を保持し、減磁が起こりにくくなります。
以上のような保管方法に注意し、適切に取り扱うことで、ネオジム磁石を長期間安全に利用することができます。
■ネオジム磁石を取り扱う際の安全対策について
ネオジム磁石は非常に強力な磁力を持つため、取り扱いには十分な注意が必要です。実際に大型磁石を取り扱う工場の現場では、指の粉砕骨折や切断など痛ましい事故も発生しています。以下、ネオジム磁石を取り扱う際の安全対策についていくつか紹介します。
1. 防護手袋や保護眼鏡の着用
ネオジム磁石を取り扱う場合は、防護手袋を着用することをお勧めします。磁石が勢いよく吸着する際に、手や指を挟んでしまうことがあります。また、磁石が割れたり欠けたりした場合に目に入ることがないように、保護眼鏡の着用も検討してください。
2. 磁石同士の衝突を避ける
ネオジム磁石同士を衝突させると、割れたり欠けたりすることがあります。衝突を避けるために、磁石はできるだけ離して保管してください。
以上のように、ネオジム磁石を取り扱う際には、安全対策をしっかりと実施することが重要です。