アクチュエータの種類と仕組み:最適な選び方も解説

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アクチュエータとは、主に電気エネルギーを運動エネルギーに変換する装置のことで、産業機械やロボットなどの機械装置に使用されます。同じ機械装置でも熱エネルギーを運動エネルギーに変換するエンジンなどの熱機関は、主な目的が「動力」ですが、アクチュエータの主な目的は位置決めなどに利用するための精密駆動です。エンジンなどの熱機関に使われる場合でも、その一部である「バルブの開閉制御」に部品として使われます。

ここでは、アクチュエータの種類とその仕組み、そしてアクチュエータの選定にあたって考慮しなければならない点について解説します。

 

 

アクチュエータの種類とその仕組み

 

■電動アクチュエータ

電動アクチュエータは、電気モーターによって作動するアクチュエータで、回転や線形運動を行います。電動アクチュエータは、高い出力や速度が必要な場合に使用されることが多く、工業分野において幅広く使用されています。

電動アクチュエータには、回転方向を変換する歯車機構を内蔵しているものや、高トルクを発揮できるハイパワータイプがあります。また、回転角度を測定するセンサーを内蔵しているものもあり、制御性が高いという利点があります。

 

・ロータリーアクチュエータ

ロータリーアクチュエータは、回転運動を利用したアクチュエータで、回転角度を制御することができます。主に電動モーターによって駆動され、回転運動を取り出すための機構を内蔵しています。代表的なものは、ステッピングモーターです。

ロータリーアクチュエータは、高い精度での回転制御が可能なため、医療機器や検査装置、半導体製造装置など、精密な制御が必要な分野で使用されることが多いです。

 

・リニアアクチュエータ

リニアアクチュエータは、線形運動を利用したアクチュエータです。リニアアクチュエータは、ストローク(伸縮)に向いており、高精度の位置決めや力の制御に利用されます。

リニアアクチュエータは、医療機器や自動車産業、航空宇宙産業など幅広い分野で使用されています。また、リニアアクチュエータには、多様な機構があり、例えば、リニアモーターやボールねじ機構を使用しているもの、ワイヤロープ式のもの、油圧や空圧を利用したものなど様々です。

 

・圧電アクチュエータ・ピエゾアクチュエータ

圧電アクチュエータは、圧電効果を利用して動作するアクチュエータです。ピエゾアクチュエータとも呼ばれます。圧電効果とは、結晶物質に電圧をかけることで変形を生じさせる現象のことでピエゾ効果とも呼ばれます。そして、このような性質を持った素子のことを圧電素子(ピエゾ素子)と言います。

圧電アクチュエータは、非常に高速かつ高精度な変位制御が可能ですが、圧電素子の変形量が小さいため、大きな力を発生させることができません。小さな力で高精度な位置決めが必要な分野、例えば医療機器や精密機器、超音波発生装置などに使用されています。

 

・電磁アクチュエータ

電磁アクチュエータは、コイルに電流を流すことで磁場を発生させ、それによって駆動するアクチュエータです。ボイスコイルモータとも呼ばれ、身近なものではスピーカが同じ原理で動作します。ローレンツ力を利用して、動力を発生させます。電磁アクチュエータは、高速かつ高精度の運動を可能にする反面、比較的大きな電力を消費するため、制御回路の設計が重要となります。

電磁アクチュエータは、自動車のABS(アンチロック・ブレーキ・システム)や自動販売機の貨物降ろし機など、様々な分野で利用されています。

 

・ソレノイドアクチュエータ

ソレノイドアクチュエータは、コイルに電流を流すことで、コイル周辺に磁場を発生させ、それによって駆動するアクチュエータです。スプリングを用いることで、戻りばね力を利用して元の位置に戻るようになっており、高速かつ簡単な動作を可能にします。

また、ソレノイドアクチュエータは、コンパクトであるため、多くの電子機器に利用されています。例えば、カメラのシャッターを開閉するための制御や、バルブの開閉制御などがあります。

 

・静電アクチュエータ

静電アクチュエータは、二つの電極間に電荷を帯電させることで、電荷の引力や反発力によって微小な変形を生じさせるアクチュエータです。静電アクチュエータは、非常に高精度な位置決めが可能で、光学機器や精密機器のアクチュエータとして利用されています。

 

・バルブアクチュエータ

バルブアクチュエータは、液体やガスの流れを制御するためのアクチュエータです。バルブとは、液体やガスの流れを制御する弁のことです。バルブアクチュエータは、電気信号を入力することで、バルブを開閉することができます。

バルブアクチュエータには、ソレノイド式(ソレノイドバルブ)や空気式(空気式バルブ)などがあります。ソレノイド式バルブアクチュエータは、コイルに電気信号を加えることで、ピストンを動かしてバルブを開閉します。

一方、空気式バルブアクチュエータは、空気を送り込むことで、バルブを開閉します。バルブアクチュエータは、工業分野で幅広く使用されています。例えば、自動車や船舶のエンジン制御、産業用ロボットの制御、空調設備の制御などに利用されています。

 

・サーボアクチュエータ

サーボアクチュエータは、目標値に対して正確な制御を行うことができるアクチュエータの一種です。内部には位置、速度、加速度などのフィードバック制御を行うシステムが組み込まれており、高い制御精度を実現しています。そのため、ロボットや自動車の安全運転支援システム、航空機の自動操縦システムなど、安全性が重要な分野で広く利用されています。

サーボアクチュエータには、DCモーターを使用するものやステッピングモーターを使用するものがあり、それぞれの特性に応じた用途に使用されます。

 

アクチュエータ選定で考慮すべきこと

機械設計においてアクチュエータは欠かせない部品であり、その選択は機械の性能や信頼性に大きく影響します。アクチュエータの選び方には、以下の要素を考慮する必要があります。

 

■必要な動力や動作速度を考える

アクチュエータを選ぶ上で、まず必要な動力や動作速度を考えることが重要です。動作速度は、機械の動作に合わせて選択する必要があります。また、動力には、作動する荷重の大きさや動作方向、作動時間などに合わせた適切なものを選択することが重要です。これらの要素を適切に考慮することで、最適なアクチュエータを選ぶことができます。

 

■環境条件(温度、湿度、振動)を考える

アクチュエータの選び方には、環境条件も大きく影響します。具体的には、温度、湿度、振動などの環境条件や設置場所を考慮して、アクチュエータを選択する必要があります。

例えば、高温や高湿度の環境では、アクチュエータが十分なパフォーマンスを発揮しない可能性があります。また、振動が大きい環境では、振動に強いアクチュエータを選ぶ必要があります。

 

■コストやメンテナンス性を考える

アクチュエータの選択には、コストやメンテナンス性の考慮も必要です。

一般的に、より高度な性能を持つアクチュエータほどコストが高くなりますが、高品質で信頼性が高く、メンテナンス性も優れています。

一方、低コストなアクチュエータもありますが、寿命や信頼性は低い傾向があります。

 

■制御装置を選ぶ

制御装置を選ぶ際には、使用するアクチュエータの種類に応じた適切な制御装置が必要です。

例えば、ステッピングモーターやサーボモーターを使用する場合は、それぞれに適したドライバーやコントローラーを選ぶ必要があります。

また、制御方式も重要なポイントとなります。位置決めが重要な場合は、位置決め制御ができる制御装置を選ぶ必要があります。

さらに、制御装置の通信方式にも注目する必要があります。RS232CやRS485などの有線通信、CANやEtherCATなどのフィールドバス通信、さらにはBluetoothやWi-Fi、ローカル5Gなどの無線通信など、目的や設置環境に応じた通信方式を選択する必要があります。

また、制御装置とアクチュエータの組み合わせによっては、制御信号の解像度や応答速度、トルクや力の制御などの面で最適な条件を実現するために、専用のソフトウェアや周辺機器も必要になる場合があります。

 

アクチュエータの選択は装置の出来を左右します。

以上、アクチュエータの種類と選び方を見てきました。アクチュエータの種類には様々なものがあり、用途に応じて使い分けますが、同じ種類のアクチュエータでも産業機械向け、ロボット向けなど実に多彩です。この多彩な種類の中から適切なものを選び出すのが設計技術者の腕ともいえます。

アクチュエータ選定の善し悪しが装置の出来を左右するので、適切なものを慎重に選びたいものですね。

 

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