電磁石の仕組みとメリット・デメリット、電磁石を活用した最先端技術を紹介

マグネットテクノロジー

電磁石の仕組みとその魅力的な用途

電磁石とは、電流が流れることによって磁力を発生する磁石のことです。

鉄や銅などの金属でできた鉄心とコイルと呼ぶ鉄心に巻かれた導線で構成されており、このコイルに電流が流れることによって磁力が発生し、一般的な磁石と同様に鉄や銅などの磁性体を吸引することができます。

また、電流を止めると磁力が消失するため、電流を制御することで簡単に取り外しできるのが特徴です。

■ 電磁石の原理とは?

電磁石の原理は、「電流の方向を右ネジの進む方向とした場合、磁場は右ネジの回る向きに生じる」という、アンペールの法則(右ネジの法則)に基づくものです。電磁石はこれを利用し、導体に流れる電流の方向に対して垂直な方向に磁力を発生させています。

■ 電磁石の基本的な性質と電流の働き

電磁石の基本的な性質として、電流が流れている限り磁力が発生し、電流が止まると磁力が消失することが挙げられます。電磁石の磁力の強さは、電流の強さ、磁場の密度、コイルの巻き数に比例するため、電磁石の磁力を強くするには、コイルの巻き数を増やすか、コイルに鉄心を入れて磁場の密度を高める必要があります。

ただし、コイルの巻き数を増やすためにエナメル線(導体)を長くすると、同時に電気抵抗も増えてかえって電流が弱くなってしまいます。 そのためコイルの巻き数を増やして磁力を強くするには、同じ長さのエナメル線(導体)で隙間なくきちんと巻く必要があります。

■ 電磁石の用途

電磁石は、通電中のみ吸着力を発揮する性質を利用して対象を一時的に固定する「ドアの施錠装置」や「ドアストッパー」、通電中のみ吸着力を発揮する性質を利用して鉄板や鉄屑などの磁性体を運搬する「クレーン」や、精密作業を行う「ロボットアーム」、磁石と電磁石が引き付けあったり反発しあう力を利用してタイヤを駆動させる「電気自動車」や、車体を移動させる「リニアモーターカー」といったように、様々な用途で使用されています。

電磁石のメリット

■ 吸着や保持に優れる

電磁石は、磁力が強く吸着や保持に優れています。そのため、大きなモノを運ぶ必要がある工場などの運搬・移動用機器、鉄板や鉄屑を運搬するクレーンなどに利用されています。また、小さな面積で高い吸着力が必要となるロボットアームの先端にも利用されており、高精度な作業も可能です。

■ ON/OFFの切り替えが簡単

電磁石は、電流のON/OFFだけで磁力を制御でき、吸着と開放の切り替えが簡単です。そのため鉄板や鉄屑を運搬するクレーンであれば、スイッチONで吸着、OFFで開放することで、仕分け作業や分別作業が可能です。

■ 長時間にわたって磁力を維持できる

電磁石は、電流を流し続ける限り鉄心が磁化されたままになります。通電中は内部で熱が発生するため、磁力を維持するために外部から冷却が必要です。この冷却を効果的に行うことで、長時間にわたって磁力を維持することができます。

■ 電磁石の大きさや形状を自由に設計可能

電磁石は、コイルと磁性体で構成されています。コイルの形状や巻き数、電流の強さなどを調整することで、電磁石の強さを変えることができます。また、磁性体の形状や大きさを変えることで、電磁石の特性をカスタマイズすることが可能です。このように、磁性体の大きさや形状を自由に設計することで、目的に合わせた最適な電磁石を作ることができます。

■ 機械的な動作や摩耗を抑えられる

電磁石は、吸着力や保持力に優れているため、機械的な動作や摩耗を抑えることが可能です。例えば、電磁石を使って物体を吸着して持ち上げた場合、物体を把持するよりも機械的な動作に必要な部品を減らせます。機械的な摩耗を抑えられるため、故障率が低くなるというのもメリットです。

電磁石のデメリット

■ 常に電力供給が必要

電磁石は、導線を巻いたコイルに流れる電流によって発生する磁力で作られています。そのため電磁石を使用する場合は、常に電力供給が必要になります。電流が通じない状況では磁力を発生させることができないため、電磁石を使う際は、電源の確保や配線の配置などが必要になります。

■ 電子機器に悪影響を与える可能性がある

電磁石は、発する磁力によって周囲の金属や電子機器に影響を与えます。特に磁力が強い場合や距離が近い場合、電子機器に悪影響を与える可能性があります。そのため電磁石を使用する場合は、電子機器との距離を取る、距離が取れない場合は、シールド板(磁性板)等で遮断する等、使用条件にあわせて適切な対策を講じることが必要です。

■ 熱に弱く温度管理が必要

電磁石は熱に弱く、温度の上昇により磁力が弱くなることがあります。外部からの温度変化や、コイルを流れる電流により発生する熱の影響を受けて温度が上昇するため、電磁石を使用する際は、周囲の温度や熱源からの距離への注意や、適切な冷却装置などが必要になる場合があります。

直流電磁石と交流電磁石について

■ 直流電磁石と交流電磁石の違いとは?

直流電磁石と交流電磁石の違いは、電力の供給方法です。直流電磁石は、電流の極性が一定である直流電流を使用しています。一方、交流電磁石は、電流の極性が定期的に変化する交流電流を使用します。

■ 直流電磁石と交流電磁石の使い分け

直流電磁石は、極性の一定した直流電流をかけるため、吸引力の脈動による唸りがありません。そのため、電磁石を使用して重量物を吊り上げるリフティングマグネットなど大型のものに使用されます。一方、交流電磁石は、商用電源を直接利用できる利便性と応答性の速さから、電磁接触器やリレーなど小型のものに使用されます。

電磁石を活用した最先端技術

■ エコなエネルギー技術

電磁石は、エネルギー変換技術において重要な役割を果たしています。例えば、風力発電機や水力発電機など、再生可能エネルギーを発電する装置には、電磁石が使用されています。また、スマートグリッドと呼ばれるエネルギー管理システムに必要不可欠なスマートメーターのラッチングリレーにも電磁石が使われており、電力の安定供給や効率的なエネルギー使用の一端を担っています。

■ 輸送システム

磁気浮上式鉄道などの高速輸送システムにおいても、電磁石が重要な役割を果たしています。例えば、リニアモーターカーは、超伝導材料を使用した電磁石を用いて、非常に高速で走行することが可能です。また、電気自動車などの車両のモーターにも、電磁石が使用されています。

■ 医療技術の進化

MRI(磁気共鳴画像診断)は、超電導電磁石を利用して人体内部の画像を撮影する技術です。MRIは、X線などの放射線を使用しないため放射線被曝することなく、がんやその他の疾患の診断に非常に有用です。また、神経細胞を刺激することで、脳や神経系の疾患を治療する磁気刺激療法もあります。

 

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