熱応用技術の基礎 ③熱の伝わり方

サーマルテクノロジー

熱は温度差によって移動します。熱の伝わり方は非常に複雑な現象の組み合わせですが、この現象は3つに分けられます。固体・液体・気体で少し事情が変わります。

1)熱伝導:主に固体において、分子・原子が衝突することで、高温から低温に移動がおこる
2)熱対流:液体や気体の熱膨張により密度が変化することで、運動が起こり物質に伴われて移動する
3)熱放射(輻射熱):物体が赤外線を放射する現象で、熱量は周囲の温度差に比例する

以上の3つの移動形態が、組み合わさっておこります。

 

固体での熱伝導

ひとつの固体の板を考えます。固体は原子が互いに結びついていると考えられます。この固体が30度ぐらいの温度だったとします。
そのとき、

①分子・原子は30度で互いに振動
②その一端を火で温める
③温められたところは温度が高くなって振動が激しくなる

原子は互いに共有結合しているので、その振動は次々と隣の原子へと伝わっていきます。この振動が伝わっていくことを熱伝導といいます。
最終的には、全体が温められ、振動することになります。
前項で述べましたように、冷たいものと温かいものをくっつけた場合、二つの物体間の熱の流れは、その二つの物体の温度差が大きいほど大きくなります。熱伝導によって伝えられる熱の流れは温度の勾配が大きいほど大きいのです。これをフーリエの法則といい、通常熱の伝わり方はこの法則にしたがって、温度勾配に比例します。

例えば、上の図のように厚さ:dの板の片面を温度:T1に、もう一方の面を温度:T2(>T1)とし、下面がT2で上面T1の温度より高い温度に保ったとします。
この時、板の中の温度勾配は(T2-T1)/d となります。これが、1秒間(単位時間)に板の面積1cm2(単位面積)を通してT2側からT1側に流れる熱量:Q は

Q=κ(T2-T1)/d

となります。この時の比例係数κを熱伝導率といいます。この熱伝導率が、熱の伝わりやすさを表します。この κ が大きいほど熱が伝わりやすいのです。熱伝導率は物質によって違いますが、同じ物質でも温度や密度によっても変化します。

 

内部エネルギー

物質は原子等の微視的粒子でできています。この微視的粒子はその物質の温度に見合った乱雑な熱運動をしていて、それに伴うエネルギー(内部エネルギー)は温度が高いほど大きく、乱雑な熱運動も激しくなります。熱伝導というのは物体の中でこの乱雑な熱運動が広がる過程とみなすことができます。その機構は物質の形態、例えば、気体である、液体である、固体であるかによって異なります。しかし、熱伝導は温度差による内部エネルギーの移動とみなすことができるので、一般的には温度の異なる部分のもつ、それぞれの内部エネルギーの差が大きいものほど熱伝導率が大きいと考えることができます。単位体積当りの熱容量、すなわち1Kだけ温度を上げるのに要する熱量(比熱×比重)が大きい物質ほど熱伝導率が大きいといえます。物質によって、分子の重さ(比重)が異なり、分子をつないでいる共有結合の強さ(物質同士の結びつきの強さ)が異なるために熱伝導率が変わってくるのです。

 

気体や液体における熱伝導

気体や液体では、それぞれを作っている物質が、その気体や液体の中で移動します(対流)。温められると対流がおこり、これを熱対流といい、熱対流や攪拌による流れなどがあると、高温の物質自身が移動して熱を運びます。固体で考えていた振動の移動とは異なります。
しかし、流れがおこらないという条件においては、熱伝導(熱対流ではない)によって熱が伝えられます。気体分子は、固体のように共有結合は薄いですが、気体分子は熱運動をしており自由に動いています。熱運動により、気体分子は互いに衝突しながら乱雑に動き回っています。この動きは高温になるほど激しくなり、速度が速くなって気体分子のもつ平均の運動エネルギーも大きくなります。高温部と低温部の差(温度勾配)があると高温の気体と低温の気体とが互いに運動・移動し、衝突することによって、入り混じっていきます。拡散によってエネルギーの移動がおこります。すなわち熱伝導がおこるのです。
液体も気体と同じように分子が熱運動によって乱雑に動きまわります。熱伝導の仕組みは気体と同じですが、分子同士が引き合う力や反発しあう力(分子間力)が気体よりも強く働くために、その影響も考える必要があります。

 

個体や金属における熱伝導

金属は固体ですが他の個体と性質が違うために、熱伝導も金属だけ非常に大きくなっています。ここでは、金属と固体を分けて考えます。多くの固体はその原子が規則正しく配列しています。気体や液体と違って、固体は動き回ることはありません。
ガラスは原子が不規則で、規則正しく並んでいませんが、原子の移動はおこらないと考えます。しかし、固体でも金属は、その中の電子が自由に動き回ることができるので、電子が自由に動き回れないその他の固体とは性質が異なり、熱伝導の仕組みが異なっています。
金属以外の固体(絶縁体)は、主要な熱運動は原子の振動です。原子の間に力が働いているので、振動は固体の中を伝わっていく(伝播する)音波のような波(格子波)になります。
固体の中では、いろいろな振動数(波長)の格子波が乱雑に発生しています。格子波の量子 (フォノンの気体)が生じています。高温になるほど波の強度である振幅(フォノンの密度)が大きくなるので、温度勾配があるとフォノンの密度の小さい低温のほうへフォノン気体が流れ、エネルギーが移動します。高温部の大きな振幅が低温部に伝わり、小さな振幅を大きくしていきます。多くの絶縁体では温度が上がるほどフォノン間の衝突が激しくなり熱伝導率は減少します。また、結晶では不純物や欠陥が少ないほど熱伝導率が大きくなります。
一方、金属の場合は原子の数と同じ程度の数の伝導電子があります。この電子は、金属の中を運動して電気を伝えます。この金属中の伝導電子は、気体と同等にみなすことができます。この電子の気体が、通常の気体の場合と同じように熱を運びます。金属でも先の絶縁体と同じフォノンによる熱伝導もありますが、通常は電子による熱伝導の方がはるかに大きく、気体のような熱伝導になります。この場合、電子の動きが自由であるほど熱伝導率も大きくなるので、電気伝導率の大きい金属ほど熱伝導率も大きくなります。