磁力の向きをコントロールする

マグネットテクノロジー

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磁力の向きを決める磁区と磁壁

図57

結晶の中の磁区と原子磁石(模式図)
磁壁部分には厚みがあり磁区間の磁化方向は急に向きを変えているわけではなく、磁壁内で磁化方向を少しずつ反転して向きを変えていきます。

等方性磁石と異方性磁石

図58

磁石には等方性磁石と異方性磁石があります。
例: フェライトの結晶と磁化容易方向
フェライトの結晶は、短い六角柱の様な形をしています。
この柱の高さ方向に磁化すると強い磁石ができます。

■等方性磁石の結晶配列

図59

立方体のどの方向から磁化(着磁)しても同じ強さの磁石ができます。
等方性磁石の結晶配列は結晶の向きが様々なため、どの矢印方向から磁化しても同じ強さの磁石になります。
結晶の向きがさまざまなため異方性に比べると磁力は小さくなります。

■異方性磁石の結晶配列

図60

異方性磁石=特定の方向から磁化(着磁)するとその方向の磁石ができます。
異方性磁石の結晶配列は結晶の向きが磁化容易方向に一定方向のため、着磁方向は矢印の磁化容易方向から磁化した場合のみ一方向になり、磁力は大きくなります。

異方性化処理

異方性化処理には 2種類の方法があります。

■磁場中成形法

図61

磁場中成形とは、磁場コイルから発生する磁束を利用して配向する(材料の磁化容易方向を一定方向に整列させること)方法です。
フェライト焼結磁石やプラスチックマグネットなどはこの製法で異方性化処理を行い、磁力の向きを揃えます。

■機械(圧延)配向法

図62

機械配向法とは、機械的圧力により磁性材料の粒子を一方向に列べる方法です。
ラバーマグネットのように厚み(=高さ)を確保できず、広い面積を求められる磁石はこの製法で異方性化処理を行い、磁力の向きを揃えます。

着磁の種類

磁石は、所定の形状に加工された時点で磁気を帯びているわけではなく、外部から強い磁界を与えられることで磁石としての性能を発揮します。磁気を帯びてない磁石に強い外部磁界を与えることを着磁すると言います。磁石には着磁方向という向きがありますので注意が必要です。形状が同じ物でも着磁方向・方法が違えば、まったく違う磁石となります。磁石メーカーにより呼び方は異なりますが、着磁方向の傾向は同じです。以下に代表的な磁石の着磁の種類を示します。

■一方向着磁(NS着磁)

スタンダードな方法で、ほとんどの磁石は厚さや径方向の一方向の着磁となります。
異方性磁石が性能を発揮し易い着磁方法です。
等方性磁石も同様に着磁することができます。
複数個の磁石を空芯コイルで一度に着磁が可能で量産向きです。

図63

図65

図64

■多極着磁

片面多極は、着磁ヨークと呼ばれる特殊な着磁装置が必要になります。
磁石のある一面を着磁ヨークに乗せ着磁を行うため片面多極といわれます。
片面からの着磁界を印加するため、磁石の性能をフルに引き出すことは難しく、
異方性磁石・等方性磁石どちらも対応可能ですが、等方性磁石に向いています。
保磁力が比較的小さい磁石に向いており、ラバーマグネット(ゴム磁石)によく使われます。

図66

図67

両面多極は、片面多極着磁と同様に特殊な装置が必要になります。
片面多極に比べ、磁石の実力を引き出しやすい方法ですが、厚い磁石の性能をフルに引き出すのは困難であり、比較的薄い磁石に適用します。着磁ヨークが着磁対象磁石の上下に必要であり、製造難度が高い方法です。

図68

円周多極は、他の多極着磁と同様に特殊な着磁ヨークが必要になります。
異方性焼結磁石では、特殊な磁石製造工程が必要になり、通常の製造設備では対応することができません。
希土類磁石の場合はボンド磁石などの等方性磁石が利用されます。
他の多極着磁と比べて、径寸法に対し一品一様の着磁ヨークとなります。

 

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