メカトロニクスの力学
力学と用語の知識
用語
力:力(F)は質量(m)と加速度(α)をかけた積の事 F=mα重量:地球上の物体が受ける力を重力といい、その大きさを重量という。
荷重:物体に働く力。地球上では重力×重力となる。
偶力:大きさが等しく、互いに平行な逆向きの一対の力。
摩擦(力):二つの物体が接触している際に、その接触面の方向に働く(力)
力のモーメント:質点に回転運動を与える力のモーメント(能率) M=FL
力学:物体や機械の運動、それらに働く力や相互作用を対象とする物理学
力の法則(運動の3原則)
力学 第1法則(慣性の法則):物体に力が働いているとき、その合力が0ならば静止を続ける。また、運動している物体は等速力線運動を続ける。力学 第2法則(加速度・速度): 物体に力が働くと、加速度αが生じる。加速度の大きさは力Fに比例し、物体の質量mに反比例する。 F=mα
力学 第3法則(作用・反作用):物体Aが物体Bに力(作用)を及ぼすと、その反対にBもAに対して力(反作用)を及ぼす。作用・反作用の力の大きさは等しい。
力学の記号・物理定数
量 | 回転運動 | 直線運動 | |||
---|---|---|---|---|---|
名称 | 記号 | 名称 | 記号 | ||
変位 | 角度 | θ | 位置 | x、y、z | |
力 | トルク | N=r×F | 力 | F | |
速度 | 角速度 | ω=v/r | 速度 | v | |
質量 | 慣性モーメント | I=mr2 | 質量 | m | |
運動量 | 角速度 | L=r×p=Iω | 運動量 | p=mv | |
運動方程式 | Iα=N | ma=F | |||
運動エネルギー | Iω2/2 | mv2/2 |
力学の基礎知識
力の表し方と物体に働く力
物体に力を加えると、静止しているものを動かしたり、動いているものを静止させることができ、さらに物体を変形させたり、破壊させることができます。今、力をF、物体の質量をm、加速度をαとすれば、

すなわち、力は質量×加速度の積で表すことができます。
これはニュートンの第2法則といいます。
式①の単位は力Fを[N;ニュートン]、質量mを[kg]、加速度αを[m/sec2]でそれぞれ表します。
注:mは単位メールを表し、質量mは記号です。
重さと質量の関係
地球上にある物体は、地球の中心に向かう加速度(重力の加速度)を常に受けています。この重力の加速度をg(g=9.8m/sec2とする)とおけば、式①より66㎏の体重は、
となり、これは地球がある物体に647[N]の力を加えたことになります。
この力を加えることを、荷重を加えるといったり、あるいは単に付加するといったりします。
我々が日常において、重さとか重力といっているのは式①のmで表している質量のことを指しており、材料の力学で荷重という場合は、重さに重力を掛け合わせたものです。
力のモーメント
ボルトやナット、あるいはネジを締めたり、緩めたりする場合にも経験するように、物体をある軸を中心として回転させようとするとき、加える力が一定ならば回転中心から距離が長いほど楽に回転できます。
上の図に示すように、原点Oを中心として回転させる場合の回転作用の大きさは、加える力Fの大きさと原点Oから力Fの作用線までの距離Lとの積で表されます。
これを点O周りの力のモーメント(moment)といいます。
力のモーメントをMとすれば

となります。
ここで距離(長さ)Lをモーメントの腕といいます。
また、力のモーメントは力F[N]と長さL[m]ので表すことにより、その単位は[N・m]であり、材料の力学では[N・m(ニュートン・メートル)]、[kN・m(キロニュートン・メートル]、[kN・mm(キロニュートン・ミリメートル)]などを場合によってそれぞれ用います。
力のモーメントは、右回り(時計回り)と左回り(反時計回り)とがあります。回転の方向によって正負の符号を付けます。
通常、反時計回りを正とすることが多いので、ここでも反時計回り(左回り)を正とします。
モーメントの和(合力)
物体に多数の力F1、F2、 ・・・・・、Fnが作用している場合は、回転中心の点Oまわりの合力のモーメントは、点Oまわりの1つ1つの力のモーメントの和となります。ここで大事なことは、力の作用している方向により、符号(正、負)が変わるので注意することが重要です。合力のモーメントをMで表せば

偶力
大きさが等しく、互いに平行な逆向き(作用する方向が反対方向)の一対の力を偶力といい、この偶力によって生じる力のモーメントを偶力のモーメントといいます。ここでも回転方向によって正負の符号をつけ、力のモーメント同様に反時計回りを正とします。偶力は物体を回転させる作用を持っており、その合力の値が0となります。
上図において、点Oまわりの偶力のモーメントをMとおけば

となります。ここで、12-11は回転直径となりますので、回転直径をdすれば、
式④は

として表すことができます。式⑤には点Oからの距離(長さ)が入っていません。
このことは点Oの位置に関わらず偶力のモーメントは一定の値Fdとなることを意味しています。
偶力の作用線間の距離(回転直径)を偶力の腕といいます。
摩擦
摩擦とは、相対的に運動している物質間に働く現象で、この分野を扱う学問領域をトライボロジーといいます。実際の物体では、接触面に垂直な成分を持つ力があれば、相対的に静止していても摩擦が発生しています。これを静止摩擦といいます。
また、相対的に運動している場合、物体の運動エネルギーは奪われ、周囲に散逸したエネルギーは摩擦熱に変わりますが、これを動摩擦といいます。
上記の力学技術と、摩擦・摩擦力を上手く利用して設計することが必要です。
設計と図面については、「機構部品を設計する」もご参照ください。

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