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なにが磁力を弱めてしまうのか?—減磁について

永久磁石は、じつは永久ではない?

磁石は、使っている間に磁力が変化してしまうことがあります。
磁力が自然に増える、ということはまずめったになく、反対に磁力が減ってしまうことは茶飯事にあります。磁力が減ってしまう現象を減磁するといいます。
減磁は「外部」「自己」「温度」の3つの影響があり得ます。
つまり永久磁石は必ずしも「永久」であり続けるとは限りません。「外部減磁」「自己減磁」「温度減磁」によって磁石でなくなってしまうことがあるのです。

減磁を含む磁力の変化には、可逆変化と不可逆変化があります。
温度変化を例に考えてみると、室温から温度変化をさせると、磁力が変わります。
もとの温度に戻した時、磁力が元に戻る場合が可逆変化(可逆減磁)、戻らない場合が不可逆変化(不可逆減磁)になります。

以下、磁力を弱めてしまう3要素「外部減磁」「自己減磁」「温度減磁」について見てゆきます。

外部磁界の影響による減磁

磁石は外部から印加される磁界の影響を受けて減磁が発生することがあります。
磁石同士を反発させるだけで発生してしまう場合もあります。

特に保磁力の小さい磁石では現れやすい現象ですので、使用途から予測してあらかじめ保磁力の高い材質を選定するなどの検討が必要になります。
保磁力が比較的弱いフェライト磁石を例に説明します。

逆磁界の影響を検討するためには、磁石固有の磁化の強さを示すJ-H曲線を利用します。
ある磁石のB-H曲線上の動作点が①です。
この時にJ-H曲線上まで伸ばした①の垂線とJ-H曲線の交点を①’とします。
①’と原点0を結んだ直線を直線①’0とします。
ここに逆磁界をかけると、直線①’0が逆磁界分だけ平行移動します。
逆磁界をかけた時の①’のJ-H上の移動点を②’とします。
②’点の垂線とB-H曲線の交差する点を②とします。
ここで逆磁界をなくし、元に戻そうとすると②点はリコイル線上を移動し、動作線にぶつかります。
この①と③の磁束密度の差が、外部磁界による減磁として表れます。

この減磁が可逆減磁なのか不可逆減磁なのかは、J-H曲線の屈曲点を通過するかどうかによります。
図示の例では、屈曲点を超えてしまっていますので、不可逆減磁となります。
逆磁界の平行移動が、JH曲線の屈曲点を超えなければ、不可逆ではなく可逆減磁となり、磁力も元に戻ります。
わたしどもマグテックが磁石製造を承る場合に、周囲に大きな電磁力のある部品があるかどうか確認させていただくことがあります。周囲に大きな電磁力がある場合には上述のような外部磁界による減磁を想定し、磁石を設計しています。

自己減磁

磁石本体の次第に減衰してゆく磁力自己減磁と言うものがあります。
自己減磁とは磁石極面から磁石内部に発生する磁界の影響で起こる減磁です。
自己減磁は磁石の形状、寸法比に依存します。
磁化された磁石は、表面に生じる磁界はN極からS極へ向かいますが、磁石内部では磁化の方向とは逆向きにHdになる磁界が働きます。
この内部の磁場を減磁界といい、磁石を減磁させる方向に働きます。

この減磁界は磁石の寸法比により異なり、磁化方向に細長い磁石ほど小さくなります。
自己減磁の影響はBH曲線上の動作点における磁束密度Bdと減磁界Hdの比で表されます。
動作点の磁界Hdと磁束密度Bdの比をパーミアンス係数と言い、Pcで表します。



これを減磁曲線上で考えると、傾きを持った直線となります。
この直線を動作線と言い、減磁曲線との交点を動作点と言います。
パーミアンス係数が大きくなると動作線の傾き方はB軸側に近づき、小さくなるとH軸側に近づきます。

パーミアンス係数は、磁石の形状に依存します。
単純な形の場合、計算で近似的に求める事ができます。
aは補正係数であり通常1.2~1.4程度です。

温度変化による減磁

磁石の磁気特性は温度により変化します。
ネオジム磁石の場合もフェライト磁石の場合も、不可逆減磁を避けるために動作点が屈曲点以下に落ちないように磁石を設計する必要があります。
わたしどもマグテックが磁石製造を承る場合には、以下に述べるような温度変化を想定し、磁石を設計しています。

高温減磁

ネオジムなどの希土類磁石の場合、温度変化が大きい、特に高温側では減磁が発生します。

ネオジム磁石を含む希土類磁石は、高温になる程、Br、Hcb、Hcjが低下します。これを負の温度係数があると言います。

パーミアンス係数が大きい、あるネオジム磁石Pc1の場合を考えてみます。
①はある磁石の20℃における動作点です。
②は高温140℃になった時の磁石の動作点です。
B-H曲線は高温になるに従って、図のように変化していきます。
右側の図をみると動作点がネオジム磁石のBr温度係数に従って低下していきます。ここでは-0.12%/℃としています。
この場合は、動作線はB-H曲線の屈曲点を超えていませんので、高温から元の温度に戻すと、磁石の動作点も元の位置に戻ります。即ち、可逆減磁の状態にあります。

次に、パーミアンス係数がPc0.2と先ほどより係数の小さなネオジム磁石の直線の場合を考えてみます。
①は磁石の動作点です。
②は高温時の動作点です。
Pc1の場合と違うところは、①~②に至る過程で、BH曲線の屈曲点を通過する点です。屈曲点と動作線の交点をK点とします。
この場合、K点に到達するまではBr温度係数に従って変化します。
K点から先は磁壁の変化が生じてしまい、元に戻らない不可逆変化となります。
③は20℃に戻したときの動作点を示します。②から③に至る過程ではまたBr温度係数に従いもとに戻って行き、③に戻ってきても不可逆変化分はもとに戻らないので①と③の差が不可逆減磁量となります。

高温不可逆減磁は残留磁束密度Brではなく保磁力Hcbに依存します。
この不可逆減磁が起こると、磁石の磁力は低下したまま元に戻らないため、設計上、注意が必要です。

低温減磁

ネオジム磁石は高温で不可逆減磁を起こし易いですが、フェライト磁石の場合は傾向が異なりますので、以下に説明します。
図は、フェライト磁石のB-H曲線を示しています。
フェライト磁石のBr温度係数は、ネオジム磁石と同様に負の温度係数ですが、フェライト磁石の保磁力Hcbは正の温度係数であり、温度がプラス側に変化するほど、保磁力Hcbは増加し、残留磁束密度Brは低下していきます。保磁力HcjもHcbと同じ傾向を示します。
逆に考えてみると、温度がマイナス側に変化するほど、保磁力Hcbは低下し、残留磁束密度Brは増加することになります。
これがフェライト磁石の特性であり、設計上、注意が必要な点です。

あるフェライト磁石のパーミアンス係数がPc0.2と小さく、常温時の動作点が屈曲点に近い場合を考えてみます。
①はある磁石の動作点です。+20℃とします。②は低温時の動作点です。-20℃とします。
動作点①は温度の低下により縦長に変化したB-H曲線上の②に移動します。
つまり、常温時に屈曲点よりも上の位置にあった動作点①は、温度の低下により屈曲点よりも低い位置②に落ち込みます。
この状態で、不可逆減磁が発生すると判断できます。

常温に戻したときの減磁量は以下のように考える事ができます。
常温時、低温時におけるそれぞれのB-H曲線の屈曲点を結ぶ直線を引きます。これを包絡線と言います。
第3象限におけるB=Hを表す直線と包絡線の交点をS点とします。
次に、低温時の動作点②とS点を結ぶ直線を引き、この直線と常温時のB-H曲線の交点を③とします。
さらに③点から常温時のB-H曲線と同じ傾きのリコイル線(平行線)を引きます。
リコイル線とPc0.2動作線との交点を④とします。
この④が低温から再び常温に戻ったときの動作点となり、常温時の動作点①と④のBrの差が不可逆減磁量となります。
これをフェライト磁石の低温減磁と言います。


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